【ニュウ|入】
釉薬を越して胎土にまで通ったヒビ。裏表両方から確認できる状態をいう。
【カンニュウ|貫入】
釉薬の表面に現れた微細なひび割れ。ニュウと違い、釉薬の下にある。
窯から器を取り出し冷却する過程で、外気との温度差により素地と釉薬が縮むことで生ずる。
窯疵※の一種で、基本的に傷とはされない。
※【カマキズ|窯疵】の項目を参照
【ホツ】
後天的にできた数ミリ程度のごく小さな欠け。口縁や高台などに見られることが多い。
【カケ|欠け】
ホツよりも大きく欠けてしまった状態。
【ソゲ|削げ|ハマグリ】
口縁・高台の表面の片側がめくれるように削れているもの。ソゲた部分の形状からハマグリとも呼ばれる。
【アタリ|当たり】
放射状のニュウ。当たった跡。壷の肩や胴などによく見られる。
【トリアシ|鳥足】
放射状に入ったニュウのなかで、特に鳥の足跡のように見えるもの。見込みなどの中心に見られることが多い。
【ユウハゲ|剥げ】
後天的に釉薬の部分だけが剥がれ落ち、素地が露出してしまっている状態。
【カマキズ|窯疵】
成形中や焼成の最中に窯のなかできた先天的な疵(キズ)を窯疵と呼ぶ。窯疵は基本的に傷物としては扱われず、焼き物の個性とされる。
例:貫入、窯ワレ、釉抜け など
【カマワレ|窯割れ】
焼成中、窯の中で割れが発生した状態。壷や茶碗の高台に見られる裂けは【底ワレ】と呼ばれる。
【きんつぎ|金継ぎ】
割れや欠けなどの損傷を漆と金で継いで直す手法。
欠けた部分を漆で成形し、金粉を蒔いて磨き上げる。金は酸化し難いため輝きが長期間保たれる。
伝統的な本漆金継ぎでは金粉を用いるが、比較的安価な真鍮粉で代用することもできる。
銅と亜鉛の合金である真鍮は金と異なり経年(酸化)による変色が発生しやすいものの、金よりもやや黄色味の強い華やかな仕上がりとなる。
【ぎんつぎ|銀継ぎ】
割れや欠けなどの損傷を漆と銀で継いで直す手法。
欠けた部分を天然の漆で成形し、銀粉を蒔いて磨き上げる。経年の変色でいぶし銀のような風合いへと変化していく。
伝統的な手法では銀粉を用いるが、比較的安価な錫粉で代用することもできる。
錫は他の金属粉よりも比較的粒子が大きく、柔らかみのある輝きとなる。また錫は銀よりも変色し難いため、銀色の輝きを保ちやすい。
【うるしつぎ|漆継ぎ】
金継ぎなどの金属粉を使用した直しとは違い、表面を漆で仕上げる。器の色や状態に合わせ漆と顔料を混ぜ合わせ色漆を作る。金継ぎよりも強度に優れる。
【簡易金継ぎ】
漆のかわりに人工的に作られた合成の樹脂・溶剤・パテを用いる簡易手な手法。
伝統的な本漆金継ぎは漆が乾くまでに日数がかかるため数ヶ月〜長ければ半年ほどかかる場合もあるが、簡易金継ぎは1、2日ほどで仕上げることができる。
手軽ではあるものの本漆を用いる金継ぎなどと比べると長期間の耐久性に劣ることや、簡易金継ぎに用いられるパテや接着剤は食品衛生法の基準を満たさないものが多く、食器には適さないなどデメリットもある。
【ともつぎ|共継ぎ】
共直しとも。直した部分が金色となる金継ぎに対し、共継ぎは破損箇所と色質感を似せて仕上げる。
【よびつぎ|呼継ぎ】
破片がない場合、似た風合いの陶片を割れた箇所の形に合わせ削り整えて継ぎ修復する手法。
【かすがいつぎ|鎹継ぎ】
鎹直しとも。中国由来の修復技術。ひび割れの横に直接小さな穴を開け、金属製の鎹を埋め込み留めたもの。
【やきつぎ|焼継ぎ|ガラス継ぎ】
白玉継とも。江戸時代に普及した技術で、ガラス粉(白玉粉)を割れた陶器の断面に塗布し低温の窯で加熱し接着する。
漆を用いた金継などよりも手早く仕上げることができ、硬度・耐久性にも優れているが、安価な瀬戸物の大量生産が始まった明治以降徐々に衰退していった。
【まきえなおし|蒔絵直し】
金継ぎ(銀継ぎ)の後にさらに蒔絵を施し仕上げる手法。
【むぎうるし|麦漆】
小麦粉(強力粉)・生漆※・水を混ぜて練ったもの。
接着力に優れており、破片の面を継ぎ合わせる接着剤として用いる。
※生漆(きうるし):原料の漆を濾過して不純物を取り除いたもの。
【さびうるし|錆漆】
砥の粉※・水・生漆を混ぜて練ったもの。
主に小さな欠けやヒビを埋めるのに用いる。
※砥の粉(とのこ):砥石にも用いられる岩石を粉末状にしたもの。地の粉よりも粒子が細かい。
【こくそうるし|刻苧漆】
麦漆・木粉・地の粉※1・刻苧綿※2を混ぜて練ったもの。
欠けが大きい・破片が欠損している場合、刻苧漆を用いて盛り上げたり成形する。
※1地の粉(ぢのこ):焼いた珪藻土を粉末状にしたもの
※2刻苧綿(こくそわた):綿を粉末状にしたもの。