Thank you very much for this year!!

2021.12.28 Category :


ご依頼をくださったお客様、協力業者様のお陰で無事に2021年の営業を終えることができました。

今年も一年間、本当にありがとうございました。

2022年も沢山の出会いがあることを楽しみにいたしております。

ご期待にお応えできるよう精一杯努力し、ご縁を大切にして参ります。

よろしくお願い申し上げます。

皆様の健康と穏やかな新年の始まりを祈念し、歳末のご挨拶とさせていただきます。

それでは、よいお年をお迎えください。

ORIGEN
スタッフ一同



歳末のご挨拶と年末年始のお知らせ

2021.12.21 Category :


2021年も残すところあと僅かとなりました。

今年も沢山のお客様とのご縁。そして色々なお品ものとの出会いがありました。

昨年に続き新型コロナウイルスによる制約が多い一年となりました。

そのようなご時世にも関わらず、査定のご依頼くださったお客様へ改めて厚く御礼申し上げます。

ありがとうございました。

幸いなことにスタッフをはじめ、家族や友人の誰ひとりもコロナに感染することなく、一年を過ごすことができました。

最終営業日まであと7日程ですが、最後まで気を緩めずに頑張ってまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

年末年始の営業に関するお知らせ。

2021年の最終営業日は12月28日(火)まで、
2022年は1月4日(火)より営業を開始いたします。

年内まだまだ、ご依頼のお申し込みをお待ちしております。

よろしくお願い申し上げます。



The Origen Best Item of the year 2021.

2021.12.17 Category :


本日は2021年に出会ったお品もののなかで最もユニークなものに贈られるOBI最高金賞のお品ものを発表いたします。

OBI(“O”rigen “B”est “I”tem)はその独自性・時代性・希少性の三つの要素を兼ね備えたもののみに与えられる栄誉ある賞です。笑

最終選考も終盤に差しかかるという時に突如として私の目の前にとあるお家の”仏壇の裏”から出現しました。所有者の方も初めてその存在を知り、仰天の一品です。

では早速ですが、一体どんなお品ものなのかご紹介いたします。

お品ものには隷書体の美しいの文字が彫られています。

素の状態というのは理想であるがそうあるには難しい状態。あるがままの姿。

作られてから何年たったのだろうか。文字通り、長い歳月を経て素の状態へと回帰しています。

表面に微かに残る漆のようなものは下地の漆だろうか?

もしくは本来は白色だった漆が木の灰汁を吸って黄系色へと変色したものか。

日に焼け、焦げ茶色となった木種は欅で貴重な柾目材。

中央には植物がモチーフになった愛らしい文様が添えられています。

大正期の図案で草花文。

時々、古い家具の装飾にも見られます。

このお品ものに刻まれた言葉の意味を象徴する記号。

オーにエックス。あるいはOにXか。はたまた丸に抜け十字と呼ばれる家紋の一種であろうか。

漆塗りが経年により剥落し、剥き出しの朱漆はさながら根来塗りを想起させる。

眼を凝らすと

朱・黒・金

の三色三層で塗られているのがわかります。

固い欅材を彫るのは容易ではない。

面取り、墨の滲みによる線の揺らぎに至るまで丹念に彫られ立体感を獲得しています。

一枚の板に彫られた文字・記号・屋号。

さて、ここまで見ればお品ものが何であるのか。。。大体の察しがついているかと思います。

それでは全貌をお見せいたします。

正体は大正時代の木製軒看板。

かつて大大阪と呼ばれ、殷賑を極めた頃の大阪にあった”酸素屋”の軒下に掲げられていたものです。

あの家紋の一種かと想像した記号は酸素=oxygen(オキシジェン)のOとXを重ねたものと推定される極めてシンプルな標章。O2と想像できる点も面白い。

板に象徴的な標章。そして”素酸・會商素三”の文字と控えめな草花装飾のみでこれ程までに魅力的な看板となっている。

このかつて大大阪に存在した会社の経営者は俳諧を嗜む能書家であったことは譲り受けた他の愛蔵品から容易に想像ができました。
それ故、標章や文字には特別なこだわりがあったのだと思われます。もしかすると本人が筆をとった書かもしれません。

屋号の三素とは化学・工業・医療など三種の酸素を取り扱っていたことからきているのか?真相は不明。

所有者の方の御祖父様がこの会社の経営者であったそうですが、ご両親ともに養子であったことから大正期の家業の詳細は不明だそうです。
ただ「医療関係の酸素などを扱っていたと父から聞いたことがあります」との証言が聞けました。ですので取扱品目に関わる説が有力。

しかし、看板・屋号の歴史には洒落や頓智といった遊び心を利かせたものが多くありますので、「酸素屋やから三素商會でええか」と単純な駄洒落という線も捨てきれません。

逆文字で書かれた漢字とアルファベットの組み合わせが明治の堅さと大正の新しい時代の萌芽を感じさせる要素を兼ね備えており、当時を物語る希少なお品ものだと思います。

同家に保管されていた三素商會の広告付き絵はがき。消印は大正九年十月一日となっています。

この時点で既に101年の時が経過しておりますが大正九年(1920年)の時点で広告付きはがきを印刷しているということは創業、看板の製作時期はさらに時代を遡るものと思われます。

大量に積まれた酸素ボンベは工場などで使われるものであろうか。急速に進む近代化にとって重要な物資であったことは疑いの余地はないでしょう。

大正時代と言えば、第一次大戦、関東大震災、そしてスペインかぜのパンデミックにより世界が大変な混乱に陥っていた時代です。

そのような激動の時代である大正時代に作られ、災害や昭和の戦禍をも免れ、令和三年に仏壇の裏からひょっこり現れたこの看板はいったい何を語りかけるだろうか。

奇しくも世界が酸素を求めている時代に。

看板に僅かに残された漆と大正期の資料を参考に画像処理チームが最新のデジタルテクノロジーを駆使して当時の姿を再現しました。

白・黒・金の三色。柾目材の欅は艶やかで美しい本来の姿へ。きっとこのような姿だったのではと思います。

さて、古い看板に彫られていた文字から随分と飛躍したことを書いてしまいましたが、100年の時を経て今のような御時世を見計らったかのように出現したこの看板に特別な意味を感じます。

実はあと数日で廃棄される運命という時に不思議なご縁により所有者様と知り合うことができました。

奇妙なご縁で手にしたこの看板。しばし眺めさせていただきます。

この度は貴重なお品ものをお譲りくださいまして誠にありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

以上。2021年OBI最高金賞のお品もののご紹介でした。

ご清聴ありがとうございました。



今日の一品 戦後路上のストリートスナップ by 徳力富吉郎

2021.12.13 Category :


こんばんは。ORIGENのブログ担当Sです。

今日は木版画のご紹介です。

師走の風景を思わせる寂しげな一場面を切り撮った興味深い作品を買取りさせていただきました。

こちらは守口市のお客様よりお譲りいただいた一品です。

薄暗い夜の路上にある移動式の屋台。店主が吹くチャルメラの音色が寂しく、響きます。

影になった人物や枯れた柳や歪んだ路面が見る人の心理を不安にさせます。

客人も他の屋台も無く寂しげな風景ですが、そば”の行灯が唯一、気持ちを安心させてくれます。

これは昭和25年の作品。

光と影のコントラストを巧みに使い、戦後の貧しい時代の空気感を見事に捉えています。

高校生の頃、大阪の西成の町に興味を持ちカメラを下げて夜の街を徘徊したことがあります。

当時、この木版画にあるような移動式の屋台を引いたおっちゃんに写真を撮らせてもらった記憶を思い出しました。

もう17.8年前のことです。恐らく当時でも現存数僅かと珍しかった移動式屋台。今はもうないかもしれません。

作者は明治末から平成を生きた版画家。徳力富吉郎。

徳力富吉郎の作品は時折、取り扱いますが古都の街並みや寺社仏閣の情景を捉えた作品が多く、写真家に例えると風景写真家という印象を持っていました。

本作は風景写真というよりも夜のストリートスナップ。

さながら、戦後日本写真史に大きな足跡を残す木村伊兵衛の眼差しのようです。

古都の名所を描いたものもいいですが、中華そばの方がリアリズムがあっていいですね。

巧みな画面構成で当時の一瞬を見事に表現した良い作品だと思います。

以上、簡単ではありますが徳力富吉郎の木版画のご紹介でした。

この度は弊社へご依頼いただきありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

ORIGENでは徳力富吉郎の作品を探しております。
古美術品などの骨董品を中心に版画から時代家具といったものまで幅広く取り扱っております。
丁寧な査定をお約束。古いものの売却はORIGENにお任せください。
お品ものの買取や売却に関してのご相談はお電話またはメールフォームよりご相談ください。
よろしくお願いいたします。

徳力富吉郎
明治35年〜平成12年、京都府出身の版画家。西本願寺絵所を預かる家系の12代目。
京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校を首席で卒業。土田麦僊に師事。国画創作協会に参加。
木版画制作に夢中になり、平塚運一、棟方志功らと版画誌『版』、麻田弁自らと『大衆版画』を創刊。
版画制作所を設立し浮世絵方式による量産も行い、京都創作版画運動の中心的存在だった。
受賞歴:樗牛賞、国画賞、勲四等瑞宝章受章、京都市文化功労賞受賞
著書:『版画随筆』、『日本の版画』、『版画入門』



Make Lost Parts

2021.12.08 Category :


会社の階段室に昭和8年製の照明器具を3灯取り付けているのですが、内1灯の房形金物が欠損しておりましたので複製を製作しました。

近年、女性を中心に流行?しているUVレジン製(樹脂)です。

オリジナルは真鍮鋳物製。

いつか類似のものが見つかればその時に取り付ければいいかと思っていましたが、珍しい照明なので出てくることも無く・・・

やっぱり飾り房がないと何とも格好が悪いので作ってしまいました。

真鍮鋳物で1点のみ特注したら結構な費用がかかるな~とケチな事を考えていた時に妻がUVレジンでアクセサリーを作っていた事を思い出しました。

まずはオリジナルから半分ずつ、シリコンで型を作ります。

シリコン型は硬化に1日かかりますが、レジンはUVライトを照射すると数分で硬化します。

エイジング塗装を担当したのは短期バイトのはずが、会社に居ついてしまった手先の器用な画家アルバイターM。

日常業務はてんてこまいな彼女ですが、こういった作業だけはどこからか別人格が現れます。

ご安心ください。

ちゃんと刳貫いてますよ。

細部までこだわりました。

逆光で全く見えません。細部までこだわった意味がありませんでした・・・・

でもパーツが付いてキリッと格好良くなったのでokです。

機能に関わらない飾り金物であればUVレジンの複製はありですね。

照明器具は昭和8年に建てられた築88年の家屋が解体される際に取り外して移設したものです。

写真には写っていませんが、受け金具は幾何学的なアールデコ様式です。

丸いガラスグローブを囲う枠には中国趣味を感じさせる装飾が施されています。

浮かび上がる三つ葉紋様には正式な名前があるのかどうかはまだ調べておりません。

ひとつの灯りのなかに西洋と東洋の趣きが同居し、混じり合った憧憬のようなものが感じられます。

1930年代と言えば政治的に複雑な時代。当時の日本の意匠の中に列強文化の模倣と遙か遠い中国文化へ憧れの意識があったことは想像に難くないですが、意図的に組み合わせたと考えるのには、いささか無理があるでしょうか?

単なる偶然かもしれませんね。

以上。失われた照明パーツ製作事例のご紹介でした。

ご清聴ありがとうございました。



純銀凸凹花瓶修理の巻

2021.12.01 Category :


出張査定のご依頼をくださった大阪市東住吉区のお客様より、修理のご相談をいただきました。

燻銀の風格とフォルムの美しさをあわせ持つ逸品です。が・・・

残念なことに凸凹です。

「何度も落下し、凸凹になってしまったんです。ORIGENさん修理ってされてますか?絵が気に入っていて、これは売るつもりはないのですが凹みを直したいんです。。。」

銀の価値だけで処分するのは忍びない。何よりも絵柄が気に入っているから手放したくない。

古くから家にある良い品ものなので修理したいと思いながらも早数十年。が経ったそうです。

口が狭く、くびれているのでなかなか難しそうだな~と思いつつも職人さんの腕を信じて

「彫金家の知人がおりますので恐らく修理可能です!」と、お預かりさせていただきました。

結果は・・・・・・

見事、美しい姿へと蘇りました!!!

表面は燻銀のままが良いとのご要望があったため、表からの加工が出来ないという制約の中、見事に修理して下さいました。
職人さん曰く、裏から押出すために専用の道具を作ったそう。

細い首を通して、絶妙な角度で押出すのは至難の技。いつも難しい案件に応えていただきまして、ありがとうございます。

お客様の大切なものを復活させることができよかったです。

これからも長く大切にされてください。

この度は修理のご依頼をいただきありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

お品もの:羽田製美秀刻松鷹図純銀花瓶