「生誕120年 安井仲治―僕の大切な写真」

2024.02.07 Category :


兵庫県立美術館で開催中の「生誕120年 安井仲治―僕の大切な写真」展を見に行って来ました。

久しぶりに最高な写真展でした。

学生時代から写真集で何度も見ていた安井仲治ですが、オリジナルのヴィンテージプリントを見るのは初めてでとても感動しました。

安井仲治は戦前のアマチュア写真家で1903-1942年という短い生涯の中で有名な写真を数多く残しました。

激動の時代の中で奇跡的に現存するヴィンテージプリントやオリジナルネガからプリントされたモノクロ写真など希少な作品全205点が結集した大回顧展です。

その他、安井仲治の蔵書や当時の関西写壇の希少資料なども見られる貴重な機会でした。

10代半ばから写真を撮り始めた安井仲治ですが、38歳という若さで夭逝。

約20年程度と短い活動期間ですが日本写真史における最重要人物の一人であり、代表作の多くは日本写真史上のマスターピースとなっております。

絵画的な作風からストレートフォト、新興写真、報道写真と多様な表現手法を用いながらも、決して写真の潮流に流されている訳ではなく、非常に自由で巧みな独特の眼差しで世界を見つめていたことが感じられます。

また短い活動期間にも関わらず、多岐にわたる撮影手法のどれを見ても卓越した表現がなされています。

安井仲治の活動期間はとても短いですが、戦後の写真家に与えた影響は非常に大きいものがあります。

短い期間に撮られた多彩な写真を見ていると後の写真家の仕事を先取りした写真が沢山あるように見受けます。

ひとつの枠に囚われることなく、透明な眼で自由に世界を見つめることで成し得たことのように思います。

有名な写真「斧と鎌」

究極にシンプルな写真なんですが、色々な事を考えさせられます。

あまりにも素朴過ぎるかもしれませんが、原点というか全てというか「写真は光の造形である」という確信に何気なく素手で触れる感覚というか。

あともう一枚。

これは1927年に『静物』と題され、仲治が24歳の頃に撮られた写真です。

静物と言えば卓上の果物などをイメージしますが、被写体は祥瑞の茶入に古染付の皿、龍泉窯の青磁鳳凰耳花生に井戸茶碗。

24歳で唐物や高麗の名物を被写体にしてしまうなんて。違った意味で凄いと思います。
「生誕120年 安井仲治―僕の大切な写真」
「美しきもの」は実に随所にある。誰かが良き眼でそれを摘出してくれれば、吾々人間に感ぜられる美の範囲がそれだけ拡張されるのだ、と思つてゐましたから自分の写真もまあそんな積りで撮ったので、材料は棄てられたトタン板の切れつぱしですが、それが自らなる、或秩序を成して陽光の下にあつたのに刺激されたのです。私はこんな場合に材料に手を触れて配列し直す場合もありますが、自分が小さい智恵で細工出来ぬ姿に出くわした時は其儘率直にこれを撮ります。この写真は後者です。」(『アサヒカメラ』1938年5月号)

作品『秩序』に対する言葉。

誠実で暖かく慕われる人柄であったという安井仲治らしい素直な言葉です。

2024年2月12日まで。

もう一度行こうか悩み中です。

残り期間僅かですが、20年振りの本格的な回顧展ですので是非この機会にご覧になられてはいかがでしょうか。

以上、簡単ではありますが最近見に行った展覧会のご紹介でした。


兵庫県立美術館公式サイト
生誕120年 安井仲治―僕の大切な写真


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北大路魯山人 信楽灰被り徳利


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