大阪府高槻市のお客様より、お譲りいただいたお品ものを写真に収めてお返しさせていただきました。
代々守り継がれてこられた日本家屋の建替え工事に伴い、お家に伝わった茶道具や古道具の処分をご相談くださいました。
最初にご相談いただいてから残すもの、処分するものの整理を少しずつ進められ、気づけばお手伝いさせていただいてからあっという間に4年の月日が経ちました。
中でも印象的だったのは家屋に残された障子や欄間の他、古い部材の再利用に積極的であられた事。
「どこかで使ってくださる方が居られたら譲りたい」
「ご先祖様が残したものを壊してしまうのは忍びない」というご依頼者様のお言葉が印象的でした。
置く場所さえあれば欲しいと思う梁や床材などの古材が沢山ありましたが、ごく一部の格子戸や障子、組み木欄間などを引き取りさせていただきました。
実際に古民家の改装で再利用させていただき、物の命を少しですが延ばせたかと思います。
お家の中を拝見していると表玄関脇の磨り硝子窓の小さな丸い穴に目が留まりました。
最初は単なる装飾模様かと思ったのですが。。。
覗いてみると。。。来客を確かめるための「のぞき穴」とわかりました。
暗いところから明るいところはよく見えますが、その反対はほとんど見えない特性を巧みに利用しています。
かつて女中さんがいらしたそうで、来客があった際にはのぞき穴を確認して家主に報告していたのかもしれませんね。
今回はこの窓から着想を得て、おくりものを作らせていただきました。
もうひとつ目に留まったのが、家財品のそこかしこに散りばめられた揚羽蝶でした。
箪笥の金物や油箪、藍染の型染め木綿布、白粉入れや文箱など古くから残されていた家財道具の多くに家紋が施されていました。
色とりどり、大小様々な揚羽蝶紋を見ているとふわりふわりと宙を舞う蝶の姿が思い浮かびました。
中には「丸に揚羽蝶紋」が紛れていますが、これは贈答品として残されていた銀杯や風呂敷に描かれていたものです。
恐らく贈り主が間違って注文してしまったのか、あるいは贈答品の家紋の選択肢に「丸に揚羽蝶紋」しかなかったのでしょう。
同じ家紋ではありませんが、これはこれでお家に伝わったお品の記憶として加えさせていただきました。
どんな仕立てにしようかと悩んでいたところ、知人の作ったアクリルフレームに「これだ!」と思うものを見つけました。
フレームの内と外との境界線が乳白色のアクリル枠によって、ちょうど良い具合に風景に溶け込んでいて気に入っています。
蝶には蘇りや復活、不滅という意味があり古くから描かれ、親しまれてきた吉祥紋です。
お家のお守りになればと思い作ってみました。
丸穴の位置は一緒にお邪魔したスタッフと余白のバランスを見ながら何度も微調整しました。
新しいお家のどこかに飾っていただければ幸いです。
この度は大切なお品ものをお譲りいただきまして誠にありがとうございました。
この場をお借りしてお礼申し上げます。
Flame design:keita hibino
Original:油箪/藍染型染め木綿布/縮緬/風呂敷/白粉入れ/文箱/銀杯/箪笥金物/明治-昭和
Revived product:揚羽蝶図のぞき窓写真飾 令和六年睦月 Limited,1
これまでのおくりもの
・皆朱群鶴蓑亀松竹梅図五ツ組写真飾 令和三年睦月 Limited,2
・雛人形青磁壺三ツ窓写真飾 令和四年弥生 Limited,1
・建具職人木工手道具黒仕立写真飾 令和四年水無月 Limited,1
・大正昭和板硝子写真飾 令和四年師走 Limited,1
・雛人形提灯箱三ツ窓写真飾 令和五年弥生 Limited,2
・桃太郎生人形丸窓写真飾 令和五年皐月 Limited,1
前回のブログ↓
スタッフ日録:100年の記憶#7