本日の素材美と題しまして実際にお客様からお譲りいただいたものを数回に分けてご紹介していきます。TOPの写真はそれぞれのクローズアップ写真。今回は左上の赤茶けた素材。月面のクレーターのような、ぼこぼことした表面。
正体は舟形吊灯籠。吊灯籠とは家屋の軒先などに吊り下げる照明器具。蝋燭や油を火種とし六角形や丸形は沢山ありますが舟形のものは比較的少なく珍しい一点です。また長年風雨に晒され、朽ちかけている様がさながら沈没船のようです。この吊灯籠を見つけたのは軒先ではなく、縁側の下でした。鉄鎖がちぎれてしまい、吊ることができなくなったために縁側の下に置かれていました。沈没してしまったのです。
船室(火袋部分)の風除け装飾は朽ち果て舟底には穴が空いています。吊灯籠は風雨に晒されるため素材は鉄よりも銅を用いることの方が比較的多いですが銅製ではこの沈没船形吊灯籠は生まれなかったでしょう。自然が創り出したものなので浪漫があります。
「自然の力によって生み出された造形美。細かな装飾部分が朽ちることで無駄な装飾の一切が取り払われ、老いても堅牢さを保つ芯の部分。鉄の味。その佇まいに侘び寂びの美を感じずにいられません」なんてキャプションが添えられていればさまになりそうです。当たり前ですが時代ものは劣化しているものの方が多く、僅かな傷みで価値が無くなることがありますが、それがかえって魅力となる事がよくあります。今回は吊灯籠のご紹介でした。次回は写真の中からいくつかご紹介しようと思います。弊社では長い年月を経たものを探しております。骨董・古美術品などの時代もの。古い建具類など幅広く取扱いしております。お気軽にご相談ください。よろしくお願いいたします。