時計修理の専門店にオーバーホールを依頼していたGrand Seiko 61GSが帰ってきました。
見事に復活。
内部の傷みが激しい不動品でしたが、職人さんの腕のお陰で時を刻み始めました。
GrandSeikoHI-BEAT(Ref.6146-8050)Cal.6146A 1972年製
48年前の時計です。ハイビートの小刻みで軽快な稼働音がとても心地よい時計です。
文字盤は濃紺色。
この濃紺色の文字盤については色々と調べたのですが、確かな情報が掴めませんでした。
Grand Seikoに詳しい知人二人に聞いたところ、
「現行のGrand Seikoは多種多様なカラーの文字盤があるが、本来は白・アイボリー系統だけで濃紺色のものは無い。つまりこれは後塗りと呼ばれるもので文字盤の傷んだGrand Seikoを海外で再塗装して再販したもの」
という意見と
「これは紛れものくオリジナルの文字盤。キングセイコーがバラエティに富んだモデルを販売していた時期に高位機種であるGrand Seikoも特殊なモデルをいくつか作った。この時計もその中のひとつで、濃紺文字盤、カットガラスの風防どちらも紛れもなくオリジナル」
との2つの意見に別れました。私はGSオタクでは無いのでどちらが正しいのか分かりませんが、実物をルーペで細かく見た上での印象では後者の意見が正しいような気がいたします。
そして、私としては文字盤がオリジナルか否かよりも、この文字盤固有の特徴が堪らない。
前回のBlogを見ていただいた方の中にはお気づきになった方もおられるかもしれませんが、濃紺の文字盤全体に退色による色の変化と銀色の斑点が無数に現れており、さながら星空のようです。
銀色の斑点は湿気に晒されたことが原因による浮き錆ですが、光の当たる角度で表情が変わる様は曜変さながら。
見方によっては文字盤の傷んだジャンク品に見えるかもしれませんが、偶然によって生まれたここにしかない一本。長い時間が生み出した特別な美しさがあります。
ヴィンテージウォッチの世界ではROLEXのトロピカルダイヤルに代表するような美しい経年変化は時計の価値を高める要素になる場合があります。
この一本もそのひとつ。不動品や傷みのあるお品ものでも本来の価値以上のものがあるかもしれません。