スタッフ日録:大聖寺伊万里|特徴と見どころ#25

2024.11.22 Category :


こんにちは。スタッフNです。

大阪府柏原市にお住まいのお客様より、大聖寺伊万里(だいしょうじいまり)の菊形皿をお譲りいただきました。

端正な菊形の器の全面に吉祥文様が施され、鮮やかな色絵と金彩の縁取りがとても豪華絢爛なお品です。

うつわの表面には、いくつもの菊の文様が絵付けされており、小さな花弁や葉っぱの葉脈といった細部に至るまで、非常に丁寧に描かれています。

伊万里(古伊万里)と聞くと、佐賀県の有田焼や長崎県の波佐見焼を思い浮かべますが、大聖寺伊万里は石川県の九谷で作られた伊万里風のやきものを指します。

九谷で作られているなら九谷焼では?と疑問も浮かびますが、慶応三年(1867年)国内外の需要に応え伊万里を模したうつわを大量に生産したのが大聖寺伊万里の始まりです。

慶応三年は幕藩体制が崩壊した大政奉還の年であり、大きな変革の時代を迎えていました。

そのような激動の時代の中、職人たちは生き残りを懸けて「本歌取り(ほんかどり)」を掲げ、制作に励んだと言われています。

その作風は当時、非常に人気であった伊万里焼の染錦を中心に、柿右衛門様式や鍋島様式にまで及びます。

本歌の伊万里焼より格下と見られることもありましたが、豪華絢爛な絵付けや細部まで凝った成形は本家の伊万里でもなかなか見られるものではないそうです。

単なる模倣にとどまらず、丁寧な技術と手間を惜しまない制作姿勢により「本物以上に本物」と評されるまでになりました。

では、どのようにして本歌の伊万里と大聖寺伊万里を見分けるのでしょうか?

お品によっては「九谷」とだけ記されたものや、本作のように「奇玉宝鼎之珍」と記されたものなど、一見ややこしく、銘での判断は難しそうです。

見分け方のポイントとしては、呉須の明度や色絵の色調、畳付の鋭角、銘の流麗な字体などが特徴として挙げられます。

素人目に判断が難しく感じますが、骨董市や骨董品屋さんで伊万里焼を見かけた際には、見分けの特徴を参考に目利きに挑戦してみたいと思います。

この度は大切なお品ものをお譲りいただき、誠にありがとうございました。


品名:大聖寺伊万里|金襴手 十六弁菊花 吉祥文 菊形皿
産地:日本
時代:明治期


前回のブログ↓
KUMATORI MUSEUM in 重要文化財-中家住宅|オリナスジカン vol,4


投稿をシェアする