スタッフ日録:古武雄|鉄絵緑彩松絵油壺#33

2025.03.14 Category :


こんにちは。スタッフNです。

本日は大阪府藤井寺市にお住まいのお客様より、お譲りいただきました古武雄(こだけお)弓野窯の鉄絵緑彩松絵油壺をご紹介いたします。

皆様は『油壺』という道具をご存知でしょうか?

その名の通り、油を保存するための容器で主に女性向けの髪油(整髪料)を保存するために用いられた壺なのだそうです。

初めて目にした時は口が狭く、下蕪形の姿から一輪挿しか徳利かと思いましたが、貴重な油を入れた壺が安定する形状にしているそうです。

口元には油の跡があり、長い年月をかけて染み出した油で貫入が深く色付いています。

こうした痕跡から、実際に生活の中で使用されて現代まで大切に扱われてきたことが伺えます。

また、松の絵は非常に卓越した筆致で描かれておりますが、どこかコミカルでありながらも松のいきいきとした生命力ある姿を見事に描いています。

油壺が広く使われるようになったのは髪型が大きく多様化した江戸時代初期-明治中期頃とされています。

この時代には『髪結(かみゆい)』と呼ばれる職業(現代でいうヘアセットサロン)が確立され、一般庶民の装いに対する美意識も変わり髪油の需要も高まりました。

お譲りいただいた油壺も、当時の女性たちの身だしなみに欠かせない存在として大いに活躍したことと思います。

油壺は時代の流れと共に、ガラスや金属製の物が陶磁器に取って代わりましたが、本品は疵ひとつないことから、使われなくなってからも大切にされていたのだと思います。

窯地による違いや、絵付けされた文様のバリエーションの豊富さから愛玩品としてコレクションされる方も多いお品です。

昔の暮らしに根付いた道具の存在を知ると、当時の人々の美意識や生活が垣間見えるようで大変面白いです。

この度は大切なお品ものをお譲りいただき、誠にありがとうございました。


品名:古武雄|弓野窯|鉄絵緑彩松絵油壺
産地:肥前国|現:佐賀県
時代:江戸時代


前回のブログ↓
大阪府箕面市にて宮永東山の青磁筒香炉を買取させていただきました!


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